第3章 With Jonah(ヨナ) Act2
「急にどうしたんです、ヨナさん?」
「…ねぇ、エドガー。俺の顔についてどう思う?」
予想もしなかった質問に、エドガーは一瞬呆気に取られた。
「綺麗…だと思いますが?」
ヨナはそれを聞いてあからさまにムスッと顔を顰めた。
「何だよそれっ」
「あれ?気に入りませんでした?褒めたのに。」
「綺麗って…女の子じゃないんだから俺はっ!」
「じゃあ、なんて言えば良かったんです?」
まだムスッとして機嫌が直らないヨナは、窓の外をプイッと向いて答える。
「なんかもっとこう…格好いいとか。」
「ヨナさんは格好いいですよ。」
「えっ?」
エドガーの言葉に、一瞬目を煌めかせたヨナが向き返る。
「…でもどちらかというと可愛い系ですが。」
「……っ!馬鹿にしてんのっ?」
「褒めてるんですよ。」
クスクス笑って愉しそうに答えるエドガーに、ヨナは怪訝そうな顔を隠さない。
「…俺はもっと、ワイルドに男らしくなりたいんだよ。」
「と言いますと?」
「例えばヒゲを伸ばすとかさ。」
ヨナの意外な発言にエドガーは目を丸くする。
「そりゃやめとけ、ヨナ。折角の美人が台無しだ。」
二日酔いで寝ていたと思われていたカイルが、ちゃっかり今の発言を聞いていたらしく、割って入った。
「…っ美人って…美人じゃダメなんだよっ!」
「…ヨナさんは今までそんなこと言わなかったのに、急にどうしたんですか?」
エドガーの真っ当な質問に、ヨナは頬をぷくっと膨らまして答える。
「俺はもっとワイルドで頼れる男になって、アリスを惚れ直させるんだよ。」
ぽかんと口を開いて言葉を失うエドガーとカイルと、ムスッと怒ったヨナを乗せて、馬車はガタゴトを進んでいった。