第8章 魔王の恋人 / 織田信長
「さすがは信長様だな……あんなに触られるのを嫌がってた舞が」
「舞に関しては、信長様に任せとけば大丈夫でしょう……俺はどっちかと言うと、あんなに取り乱した信長様にびっくりだ」
家康の言葉に政宗が頷く。
「確かに、人を斬っても眉一つ動かさないお方が……でもこれで、舞が孕んだとかになってみろ。 安土は終わるぞ」
「そこはもう…祈るしかないですね。 政宗さんが尋問をしている間に、聞き込みをしてきます」
「ああ、頼む…絶対吐かせるぞ、出来れば信長様が来る前に」
二人は神妙に顔を見合わせ、頷いた。
「舞、白湯でも飲むか」
自室に舞を連れ帰った信長は、舞を布団に寝かしつけた。
舞は少しずつ話すようになり……
信長の差し出した白湯を、起き上がりながらゆっくり受け取る。
「ありがとうございます」
白湯を飲む舞の横顔を伺うが、なんの感情も読み取れない。
ただひとつ言えるのは。
信長が大好きな瞳に、光が戻ってないと言う事だ。
信長は身体を寄せ、舞のまぶたに優しく口付けを落とす。
腫れ上がった目が少しでも癒えるように……
そう思い口付けているのに、舞の目からは次から次へと涙が零れていった。
「……ごめんなさい、信長様」
やがて、舞がぽつりと呟いた。
「貴様が謝る事は、何もないだろう」
「いいえ、あります……私、男の自由にされていました」
そう言う舞の身体が、ふるふると震える。
「殴られて、怖くて声も出なくて……たくさん辱められました。 信長様以外には触れられたくないとこまで」
「舞……」
「私、汚れちゃいました。 もう……信長様に優しくしてもらえる資格なんて、無いのに」
(舞……)
信長はあまりにも痛々しい舞を見ていられず、その腕に抱き締めた。
か細く震える舞の身体はあまりに華奢だ。
こんな小さな身体を傷つけたその男に、殺すだけでは物足りないくらいの憎悪が生まれる。