第2章 臆病なその奥 甘蜜編/豊臣秀吉
「だから…駄目って、言ったのに…!」
舞は身体を起こし、ぎゅっと足を寄せると、涙目になって秀吉に訴えた。
その顔があまりに扇情的で、身体がぞくぞくするほど疼いた。
秀吉は舞から身体を起こすと、若干余裕が無くなっているのを悟られないように、ちょっとからかい混じりに言った。
「かーわいいなぁ、お前は」
「か、可愛くないっ」
「可愛いよ。 それに、気持ち良かったんだからいいだろ?」
「駄目なの、だって…」
舞は少し伏せ目がちになり、小さな声でぽつりと呟いた。
「秀吉さんと一緒に気持ち良くなりたいから……」
(あのなぁ…)
その一言で、無けなしの余裕を剥ぎ取られてしまった。
舞を気持ち良くしてやろうと、一生懸命に保っていた理性はガラガラと音を立てて崩れ…
代わりに、めちゃくちゃに食らいつきたいと言うえげつない感情が、ふつふつと湧き上がる。
「あんまり煽ってくれるな。 今更だけど、俺も今はあまり余裕が無いんだ」
「そんなの無くていい」
「だから、煽るな。 優しく出来なくなる」
これじゃ昼間の二の舞だ。
こいつの言葉は、俺の想像を軽く越える。
言葉ひとつで、おかしくなる。
こんな相手は初めてだ。
舞は、そっと秀吉の着物の衿に手をかけると、前をはだけさせた。
そして、ちゅっと音を立てて胸板に口付けた。
「っ……!」
「昼間も言ったけど、私、秀吉さんになら何をされても嬉しいの。 それに…どんな秀吉さんでも受け止めるって決めてるから」
そのまま、先程舞にしたように、肌を滑らせて肩から着物を落とした。
「…愛してるよ、秀吉さん」
そう言った舞の顔が、あまりに綺麗で…
ああもう駄目だ、と観念した。