第28章 緋色──Rye, Bourbon, Russian
「あら完璧!ちゃんと変装できてるじゃない!」
後日。マカデミー賞の会場から帰って来たお母さんが、変装し終えた赤井さんを見てそう声を上げた。
「これで私が毎週通って変装のチェックしなくても大丈夫ね!」
「お世話になりました……」
赤井さん──基、昴さんはお母さんにそう頭を下げた。
お母さんは「私的には会いに来る口実がなくなってちょっと残念だけど……」と頬を赤らめてそう言う。
「お母さんミーハー……」
私が呆れてそう言うと、お母さんは少しムッとした表情になった。
「あらいいじゃない!出来ることなら瀬里ちゃんと立場代わりたいくらいよ!」
「代わってもいいけど、かなり精神的にキツイと思うよ?」
私は苦笑いでそう返した。
そんな会話をしているそばで、ジョディさんとキャメル捜査官が驚いたように変装した赤井さんを見ていた。
「まるで別人ね……」
「本当に赤井さんですか?」
変装の過程を見ていたにも関わらず、未だに信じきれない様子の2人に、赤井さんはチョーカー型変声機のボタンを押してみせた。
「声は元のままだろ?だが、首に付けたこのチョーカー型変声機を使えば……沖矢昴になれる……」
一瞬で声が変わった赤井さん──昴さんに、キャメル捜査官は「こ、声が変わった……」と目を見開いていた。
「でもシュウとどういう関係なんですか?確か元女優さんでしたよね?」
ジョディさんはお母さんにそう尋ねた。
「あ、ああ実は……」
「ボクの遠い親戚なんだ!」
コナン君がさらりと助け舟を出した。
「赤井さんは目立たないアパートに住むって言ってたんだけど、偶然火事になっちゃって……。だから瀬里奈姉ちゃんの家に住めばって言ったんだ!」
だがジョディさんはなおも不思議そうに尋ねて来る。
「でも男女で一緒に暮らすとか……。それに、瀬里奈さんの弟の工藤新一君も知らない男が家にいたら驚くでしょうし……」
「私は別に問題はないんですけどね……。まぁ、新一は事情を知ってるから、多分平気かと……」
と、私の携帯が着信のパターンで鳴った。
「もしもし?……あ、珠希さん!え?もう来たの?うん……うん、分かった。じゃあ5分で支度する。うん、了解でーす」
マネージャーがもう迎えに来てしまったらしい。私はお母さんを空港に送っていくために2人で家を出た。