第28章 緋色──Rye, Bourbon, Russian
「……じゃあ私、盗聴器を調べて来るね」
そう言って私はパタパタと家の中に仕掛けられた盗聴器の類を調べに行った。
「どうや?」
桂羅兄に訊かれ、私は大きくVサインをした。
「異常ナシ!……ってことで……」
私は上に向かって声をかけた。
「おーい!もーいーよー?」
そう声をかけても降りて来ない“彼”に、私は軽くため息をついた。
「もォ……」
私はある部屋を軽くノックした。
部屋にいたのは変装を解いた昴さん──基、父である工藤優作と、モニターに囲まれているコナン君。
「お疲れ様〜」
「ホンマただのお子とは思えへんな……」
桂羅兄の言葉を私は苦笑いで流した。
──基本はマスクに仕込んである変声機でお父さんが喋る。
マスクを取れと言われたり答えにくい質問をされた場合は、2度咳払いをした後に変声機に内蔵されたスピーカーを通してコナン君が答える。そしてお父さんが話したくなったら1度咳払いをする。
ちなみにお母さんはお父さんを変装させた後、すぐにマカデミー賞の会場に向かって工藤優作を演じている。シークレットブーツとチョーカー型変声機を駆使しているため、かなりしんどいはずだ。ごめん、お母さん。
お母さんが昴さんに変装しなかったのは、首元を入念に調べられれば女だとバレる可能性があったから。
「……昴さんは戻って来るのよね?」
私はコナン君にそう尋ねた。
コナン君は「ああ……」と頷く。
「守んなきゃいけねぇ奴が……いるからな……」
コナン君が阿笠博士の家を見つめながらそう言った後、桂羅兄が口を開いた。
「……ちょい話逸れるけどええか?」
「ん?なぁに」
「……このコナンっちゅうガキ……ホンマ何者なんや?」
……詰んだ。←
「えーっと……どうしようコナン君?」
さすがにもう誤魔化しはきかない。
と、お父さんが絶対零度の笑みで桂羅兄を見た。
「私としては君こそ何者だという話なんだがね……」
「もうお父さん!それはちゃんと説明したでしょ?色々あるの!深く探るのNG!」
私は無理やりお父さんの疑問をねじ伏せる。
「……APTX4869って覚えてる?」
「!……それって」
「そ。アレの副作用って所かな……」
その説明だけで分かったらしい。桂羅兄はさして疑問も抱かずに納得した。