第4章 物語の始まりへ
──結局彼女の言った通り、10億円はホテルのフロントに預けてあったらしい。組織の者に渡る前に回収でき、奪われた10億円と札番号が一致したため、死亡した3人の犯行も明らかとなった。
宮野明美のそばに落ちていた拳銃からは彼女の指紋だけが発見され、『罪の意識に耐えかねた彼女が自殺した』とされ、10億円強奪事件は幕を閉じた──。
「……ってことになってるけど」
数日後のポアロ。
私は向かいに座るコナン君と事件のことについて話していた。
事件は無事解決したはずなのに、浮かない顔のコナン君。その理由が分かっているからこそ、私には何も言えなかった。
「本当の首謀者はあいつらなんだぜ?くっそー……」
「でもあんたは奴らに存在を明らかにできないでしょ?それに今んとこ証拠もないわけだし。とにかくお金だけでもあいつらに渡らなかっただけマシだと思うんだけど?」
「そりゃそーだけどよー……」
どうやら、宮野明美さんを救えなかったことが相当悔しいらしい。
ふう、と私はため息をついた。
「私的には、宮野明美さんが私の母のことや私のことまで知ってるのに驚いたんだけど」
私がそう言うと、コナン君はずずずっとアイスコーヒーをすすった。
「オメーの母さん何してた人なんだよ?組織でコードネームをもらうくれーだもんな……」
「知らないわよそんなの。ただ──」
私には思い当たる節があった。
「母が昔よく言ってたのよね……。『お母さんは怖い薬を作ってる人のお手伝いしてるの。でも瀬里奈はやっちゃダメ。あなたがやるような仕事じゃないわ』って」
「怖い薬?」
コナン君は思いっきり怪訝そうな声を上げた。
「そ。でね、ここから先は私の想像だけど……。その怖い薬があなたを幼児化させた薬だとしたら……どう?」
私がそう言うと、コナン君はものすごい形相でこちらを見た。
「オメーの母さんがオレを幼児化させた薬作ったのかよ!?」
「声大きいわよ。それにこれは仮定の域を出ないわ。まだ分からないことありすぎるもの……」
私がまたため息をつくと、コナン君も「そうだよな……」と意気消沈した。