第4章 物語の始まりへ
「まさかあなたがいるなんてね……」
宮野明美さんは少し哀しそうに笑った。
「ねえボウヤ……教えてくれる?」
彼女はコナン君の方を向いて訊いた。
「どうしてここが分かったの?」
「発信器さ……」
宮野明美さんだけでなく、私もきょとんとした。
コナン君は発信器が付いてしまった経緯を説明する。宮野明美さんが
「あ、あなたは一体!?」
と叫んだ。
「江戸川……」
コナンくるはそこまで言って口ごもった。
「工藤新一……探偵さ!!」
私はとても驚いた。あれだけ誰にもバラすなと言っていたのに。
「探偵……?」
宮野明美さんも一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに自嘲的な笑みに変わる。
「フフフ……計画は完璧だったのに、みんな死んじゃったわ……。運転技術を買って雇った広田さんも……腕っぷしを見込んで仲間に入れた彼も……そ、そしてこの私も組織の手にかかって……」
「組織……?」
私は思わず訊き返した。宮野明美さんは小さく笑って言った。
「謎に包まれた大きな組織よ……。ま、末端の私に分かっているのは、組織のカラーがブラックってことだけ……」
「ブラック!?」
私とコナンは声を揃えて言った。
「そ、組織の奴らが好んで着るのよ……。か、カラスのような、黒い服をね……」
まさか──
(黒ずくめの奴ら!?)
コナン君と私は顔を見合わせた。宮野明美さんがコナン君と私の手をガシッと掴む。
「さ、最後に私の言うこと……聞いてくれる……?10億円の入ったスーツケースは……ホテルのフロントに預けてあるわ……。そ、それを奴らより先に取り戻して欲しいの……。も、もう奴らに利用されるのは……ごめん、だから……」
宮野明美さんは目に涙を溜めていた。
私も涙腺が緩むが、きゅっと堪える。
「た、頼んだわよ……小さな……探偵……さ……」
私とコナン君の手を握りしめていた手がコトリと地へ落ちた。
コナン君も私も何も言わない。私はそっとその場から離れた。
「……瀬里奈さん」
車を回してくれたらしい安室さんが声をかけてくる。
「行きましょう」
「はい……。送ってくれますか?工藤邸まで」
「……!……ええ、もちろん」
安室さんはニコリと笑って、執事か何かのように車のドアを開けてくれた。