第4章 物語の始まりへ
女性を追いかけて着いたのは港。
その港にはポルシェが停まっており、その車からはあの人達と同じ匂いがした。
まさか……ね。
そう思いつつも私は女性を尾けていく。そして女性は港の少し開けたところで立ち止まった。
「ご苦労だったな、広田雅美。いや……宮野明美」
私の耳に知らない男の声がした。低い声と背筋がぞくりとするような喋り方。
「1つ聞いていいかしら?あの大男を眠らせるためにあなたにもらったこの睡眠薬……飲んだ途端に、血を吐いて動かなくなったわ……。どういうこと?」
睡眠薬?血を吐いてって、毒薬?なんでそんなものをあの宮野明美さんが──
「フ……それが組織のやり方だ……」
そこまで聞いた時、誰かが私の口を後ろから塞いだ。
「!!?」
「しーっ、静かに!大人しくしてください」
声の主は──「……安室さん!?」
なぜここに、と思ったが安室さんはしかめっ面で私を睨んだ。
「なぜあなたがここにいるんですか?」
「ちょっと頼まれ事してたんです。安室さんこそ何でここにいるんですか」
そう言って睨むと、安室さんは小さく笑って言った。
「僕も同じですよ。多分、君に頼んできた人とは違いますがね」
安室さんがそう言いながら私の腕を引っ張り上げようとした刹那、──銃声が鳴り響いた。
「明美さん!」
「瀬里奈さん!?」
安室さんを振り切って銃声が聞こえた方へ向かう。そこには血だまりの中に横になっている宮野明美さんと、その傍らに佇むコナン君、そして駆け寄ってくる蘭ちゃんの姿も見えた。
「コナン君!?蘭ちゃんも!」
「瀬里奈姉ちゃん!?」「お姉さん!?」
蘭ちゃんは私がここにいることに疑問を感じたようだったが、
「とにかく、瀬里奈姉ちゃんは救急車を!蘭姉ちゃんはおじさん達呼んできて!」
「オッケー」「わ、分かった!」
コナン君の指示に従って救急車を呼ぶ。
「む、無駄よ……もう手遅れだわ……」
「喋っちゃダメだ!喋ると傷口が……」
コナン君が必死に止めるが、明美さんはなおも話そうとする。
「ぼ、ボウヤは確か……探偵事務所にいた子よね……?そしてそこのあなたは……“キティ”──真凛さんの娘ね……?」
「!?」
バレてる……?
「……知ってるの?」
「そ、組織で知っている人間は少ないと思うわ……」