第11章 揺れる警視庁1200万人の人質
私は少し前の佐藤刑事との会話を思い出していた。
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『……それが最期のメールですか?』
『そうよ。「割と好きだった」なんて言われても、今さら遅いのよ』
佐藤刑事は苦笑した。私も椅子に腰掛けながらくすくすと笑う。
『……でも、それだけ彼に想われてたってことですよね?それってすごいことだと思いますけど』
『そうかしら?』
『ええ。少なくとも私はそう思います』
私がそう言うと、佐藤刑事は小さく笑った。
『ふふ、ありがとう瀬里奈ちゃん。さ、もう遅いから送るわ。今日は車?』
『いえ、歩きです。お願いしてもいいですか?』
『どうぞ。さ、行きましょ』
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(……ああ、佐藤刑事はまだ松田刑事のことを──)
私は睫毛を伏せた。忘れようと努力するよりも、思い出にしてしまった方がどんなに楽なことか。
何となく子供達の実況見分が終わるまで一緒にいると、もう日暮れである。
「そういえば、今日はもう行ったの?」
不意に佐藤刑事に訊かれ、私はニッコリ笑って答えた。
「はい、今日は大学終わった後すぐに。明日はバイトの前に行くつもりです」
「あんまり無理しないようにね」
「はーい」
心配そうに顔をしかめる佐藤刑事に、私は苦笑しつつ返事した。