第18章 二幕:はじまり
安室side
思ったより遠くて時間がかかってしまった。
くのえさんを待たせてしまったな。
急ぎ足で元の場所へと向かう。
「.....ん?」
誰だあの男。
くのえさんの腕を掴んでいる。
くのえさんの様子を見ると知り合いという雰囲気ではないし、、、
「あの
「私のツレに何か?」
声をかけようとしたところで違う男の声でかき消された。
聞覚えのある声だった。
工藤優作氏の家に住んでいる、シャーロキアンの大学院生。
「へ、あぁ、なーんだ。恋人が帰って来ちゃった?ざんねーん。愛の逃避行失敗だね。じゃあ、またねー。」
そう言ってくのえさんの腕を掴んでいた男は離れていった。
「あの、ありがとうございました。えっと.....、?」
「あぁ、礼には及びませんよ。腕、大丈夫でした?」
「..................沖矢昴!!!!!.....どうしてあなたがここに?」
「安室さん!おかえりなさい。お知り合いの方なんですね。沖矢さん?っていうんですね。」
くのえさんが俺に笑顔を向けた後に沖矢昴にも笑みを向ける。
「あぁ、君のツレでしたか。余計なことをしてしまったかな?」
「そんなことないですよ。ね、安室さん?ひとりでどうしようかと思ってたので.。」
「...まだ、早い時間とはいえ、女性をひとり待たせるのは感心しませんね。」
お前には言われたくはない。
くのえさんには関わって欲しくなかった。
「確かに、僕にも非があったことは認めますが、貴方には関係のないことだ。くのえさん、行きましょう。」
「え、あの、ちょっと、安室さん??...あの、すみません。本当にありがとうございました。失礼しますね。」
「はい。また会うことになると思いますよ?きっと。」
「...??安室さーん、待ってください。」