第18章 二幕:はじまり
一体、なんなんだ。
沖矢昴。なぜあの男が。
「...安室さん?何か怒ってます?あ、もしかしてさっき会った沖矢さんって方と仲悪いとか?」
「......はは。そんなことないよ。」
「図星ですね。安室さん、いつもは隠すの上手なのに、今日は下手です。」
「...そう、かな?」
はぁ。イライラする。
くのえさんにいやな思いをさせたと思うし、それを助けたのがあの男だったことに酷く腹が立つ。
「安室さん?気にしないでくださいね。私、安室さんが駆けつけてくれて嬉しかったですから。」
「...でも、僕より先に沖矢が来ていただろ?」
「だって、あの人は知らない人ですから。沖矢さんに助けてもらっても、きっと安心はできないです。安室さんが走って来てくれるのを見つけたから、あんなにホッとしたんです。」
.......................。
「はぁ。くのえさんは優しいね。ありがとう。」
「...もぅ、何ですか?急に。ありがとうっていうのは私の方です。走って来てくれたのと、それから紅茶も。」
「ふふ。さて、これからどうします?」
「あ、結局、クレープ食べ損ねちゃいましたね。」
「あ、そういえば。」
「んー...また今度、付き合ってくださいね。」
「もちろんだよ。あ、じゃあ、バッティングセンターリベンジでもするかい?たしか、この辺だよね?」
「いいですね!この前行った時は、2回しか当たらなくて散々でしたから...今日こそリベンジです!」
「コーチは任せてね。」
かわいいなぁ。
人から声をかけられるというのもわかる。
こんなにかわいいんだ、きっと俺のいない間に誰かが攫っていってしまうかもしれない。それこそ、さっきの男みたいな輩や例の彼女の先輩とかに.....。
くのえさんが何処かにに行ってしまわないわないよう、誰も知らない箱に閉じ込めてしまいたい。という汚い感情が湧き出てくる。まぁ、実行はしないけど。
でも、なんでもいい。くのえさんを繋ぎ止めておけるような何かが欲しい。
「...安室さん?どうかしました?」
「なんでもない。行こうか?」