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境界線。【安室透夢小説】

第15章 *残り香*



くのえさんと映画館に行き映画を見た。
最近話題になっているサスペンス映画だった。
だが、頭の中でいろいろなものがぐるぐる回って集中できなかった。


そして今、 くのえさんの家に向かって2人並んで歩いていた。

「今日の映画面白かったですね。」

「...そうですね。」

「...安室さん、どうしたんですか?」

くのえさんが俺の手を握る。

「なんでもないよ。少し、考えごとしてて。」

「そうなんですか。....あの、少しだけ寄り道して行きませんか?」

「...寄り道?あまり遅くなると...」

「分かってます。だから、本当に少しだけ。ね?」


くのえさんに手を引かれながら小さな公園に入っていく。

「安室さん、今日誘っちゃったのまずかったですか?なんだか、映画の最中も上の空だったみたいだし。」

くのえさんが心配そうに尋ねる。
気を遣わせてしまったかな。
だが、 くのえさんの顔を見つめると夕方ポアロの前に一緒に居た男の顔が浮かんでくる。
しかし、 くのえさんに限って。
俺のことをこんなに大切にしてくれているのに。

「...すみません。本当になんでもないんだ。」

「もしかして、またお仕事頑張りすぎてるとか?朝は元気そうだったけど、今日大変でした?.....あ、そういえば、ハグって癒やし効果があるの知ってました?ぎゅーっの刑です!」

そう言って微笑むと くのえさんは俺に抱きついた。

「...ちょ、ここ外ですよっ//」

「誰も居ないし大丈夫ですよ。」







________バッ







その時、微かに感じた男物の香水の香り。
くのえさんが愛用しているものとは、程遠い匂い。
これもさっきの男の匂いなのだろうか。
そもそもこんなに香りが移るほど密着していたのか?

咄嗟に くのえさんを引き剥がしていた。

「...きゃっ。安室さん?何か?」

この時ばかりは くのえさんの反応に微かな苛立ちを感じた。


















「... くのえさん。昨日の夜から今日にかけて一体、誰と何をしていたんですか?」
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