第2章 山茶花(サザンカ)-風間千景-
久しく見たは、少し痩せていて…以前の無垢な雰囲気ではなく、少し憂いを纏った儚げな美しさと変わっていた。
だが、瞳をのぞけば…それはまだ澄んだままで…
敢えて鬼の姿で現れた俺を、昔のように綺麗と言う。
雪村との婚姻を辞めることを里に告げ、人間を娶ると告げてきた。
それに反対する者を説き伏せ、賛成する者にも意見を聞き…里の…鬼の今後について話し合いをしてきた。
他の鬼の長にも話をつけた。
もう後にはひけない。
少々時間がかかったが…
口づけをした後のを見れば、単なる自惚れではないと確信できる。
「鬼を怖いと思うか?」
などと、俺らしくもなく本題に入らず、の本心を探ってしまうのは…この選択は正しかったのだろうか?と考えているからだろうか。
だがしかし、怯みもせずに俺の視線から逸らすことのないの瞳が、愛おしくてしかたない。
ああ…そうか…
怯みながらも逸らすまいと、俺を睨んでいたあの少女の瞳に、既に俺は落ちていたのか。
俺に会いたかった、と涙を溢れさせたに、再び唇を合わせる。
驚きで固まっていた初めの唇よりも、心をほぐしたの唇は、甘くて柔らかい。
触れるだけの口づけから、どんどん深く口づけていく。
息が上がって唇が少し開いた所に、舌を滑り込ませて口内を掻きまわせば、男を奮い立たせるような甘い吐息が漏れてきた。
さらに深く深く口づける。
お前の相手は鬼だ。
覚悟をしておけ。
がくん、とは膝から崩れて、それを抱きとめて、さらに口づけをすれば、俺の腕を掴んでいたの指に力が込められた。
唇を離せば、はあはあ、と苦しそうに紅潮するの表情に、さらに欲を掻き立てられたが…それはまた後の楽しみとしよう。