第1章 出会いはさようならから
目の前に広がるのは、絶望。
本来、この部屋は結婚してパートナーとなった幼馴染と、二人で幸せを作るための家。
そして、この部屋は私達調理人にとって、最も大切なダイニングキッチン。
一番拘り抜いて用意した、思いれのある部屋。
「テメェ、どういうつもりだ…」
それなのに、それなのに…。
今、この部屋には私と幼馴染の他に、人が居る。
松野組組長、松野おそ松。
彼の目は野獣のようにギラギラと輝き、旦那を殺さんばかりに見ている。
「す、すみません…」
旦那は、ひたすら土下座していた。
一緒になって土下座しているのは、和服が似合う黒髪の綺麗な女性。
如何にも色っぽい、ヤクザの女って感じの人。
結論から言おう。
旦那と松野婦人が浮気した。