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ぼくは、きみと。

第2章 #02


今日予定していた二つの講義はなんなく終了した。吉本は僕の隣で眠そうにしていたけど、絶対勉強は教えてやらない。先生が終わりと言う同時に、吉本はぐぐっと腕を伸ばして背伸びをした。

「はー、終わった。笹崎、どこか食いに行こうぜ」

「ああ、うん。いいよ」

僕らはこうしてよく、大学帰りにどこかに外食をしに行く。と言っても昼を過ぎているので、カフェでお茶をするくらいだが。
僕たちは荷物を持って行きつけの喫茶店へと向かった。

「でさ!その時の女の子がすげー可愛くて!」

道中、僕は吉本の合コンでの出来事を聞き流しながら人や車が行き交う大通りを歩いていた。その時、僕の耳にとても印象的な言葉が飛び込んでくる。

「じゃあな!トカゲ女!」

トカゲ女という言葉はとても衝撃的で、僕は思わず足を止めて横断歩道の向こう側にある小学校を眺める。すると、車が激しく行き交っていてよく見えないが、男子小学生が誰かにトカゲ女と吐き捨てているのが見えた。
そして先程の言葉は吉本にも聞こえていたようで、同じように正門を眺めながらぼそりと呟いた。

「ああいう時期って、ちょっと人と違う所があるだけですぐいじめに発展するよな。可哀想にな」

すると、丁度車用信号が赤に変わり、横断歩道の信号が青になった。そして僕は、横断歩道を歩いてくるトカゲ女と呼ばれていた人物に驚愕する。
それは、昨日動物園で会ったあの少女だった。しかし少女は自分を罵倒する男子小学生には見向きもせず、歩みを進めている。と、ふと少女が顔を上げ僕と目が合った。
その瞬間、少女は一瞬驚いたような顔をしていたが、すぐに足取り軽く僕の元へと駆け寄って来たのだ。

「また会いましたね、お兄さん」
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