第19章 とある街のbarで
気付けばまた、ベンは船内のどこかへと行っていた。
しばらくしてから、赤髪さんは豪快に笑いながら、こう切り出してきた。
「それにしても、ベンが女を船に乗せようとするなんてな~」
「何言ってるんですか、飽きられたら、オシマイ。私、娼婦でもないのに…」
「んん?まぁ、茉都莉はこの船のクルーになったんだから気にすんなよ」
あれ、なにこの会話の噛み合わない感。
「しかも、俺を脅すような言い方までしてよぉ~。よっぽど茉都莉の事を気に入ったんだろ」
「はぁ…ありがとうございます?でも、私みたいな貧相な身体の女なんかで、楽しめるんでしょうかねー」
「………」
「「ん??」」
2人同時に、顔を見合わせる。
なんだか、さっきから話が噛み合わないような。
「おいおい、茉都莉はもうこの船のクルーだろ?ベンの女なんだよな?」
「…はい!?えぇ!?ちょ、何言って…私、そんなんじゃないですよ!?」
「どういうことだ?」
「いきなり連れてこられたんだから、どうせ海の上での慰み者だとしか思ってませんよ!?」
「なぁにぃ~~~!?」
「だ、だって、島で女の人を買っては、飽きたら島でおろすんでしょう!?」
「オイ待て!俺でもそんな事はしねェぞ!?ましてや、あのベンがそんな事するわけねェだろ!!」
「ええぇえぇー!?じゃあ、私って何なんですか!?意味が分からない!」
赤髪さんと2人で、驚きながら話していく。
どうしてこんなにも話が食い違っているのか分からない。
「…と、とにかく!ベンには内緒にしてくださいね!」
と、激しく動揺しながら私が言えば
「もう遅いんじゃねェか?」
と、赤髪さんにあっさりと言われてしまった。
「え?」
「出て来いよ、ベン。これで茉都莉の気持ちが分かっただろ」
陰からワインを持ったベンが出てきたのを見て、さっきの会話を聞かれていた事を悟った。
「嘘っ!?」
思わず飛び上がってしまうのも、仕方ないと思う。
「…お頭。茉都莉を借りてくぞ」
「おう。ベンのもんだろ」
赤髪さんは笑ってるけど、私としては、気まずい。
静かな所まできたはいいものの、今ベンが何を考えているのかと思うと、怖かった。