第19章 とある街のbarで
ベンが持っていたワインを、2人で飲む。
「…そう思っていたのか」
私にとって、少し気まずいような静かな空気の中、そう言ったベンの言葉の意味を、理解するのが少し遅れた。
「…だって、それ以外思い付かなかったんだもの」
…実際、そうなんでしょう?
そう問いかけ、沈んだ気持ちで暗く凪いだ海を見つめる。
「俺は、欲しいモノは全力で手に入れる、と言ったはずだ。」
問いかけというより、確認のような言葉に頷く。
「身体が目的じゃねェ。俺は、お前を捨てるつもりはねェんだ。」
頭ね中を、「?」が飛び交う。
「らしくねェ行動にまででたんだ。……まだ気づかないか」
「う…。えっと、ごめんなさい…?」
そう言った私を見て、呆れたように溜め息をついて、ベンは急に顔を近づけてきた。
熱い吐息が、耳元にかかって、とてもくすぐったい上に、ベンとの距離がとても恥ずかしい。
「まだ、分からないとはな…。お前が好きだ、茉都莉」
だから連れ去った、と、耳元で低く囁かれた言葉を理解して、顔がさらに赤く、熱くなる。
驚きと恥ずかしさが嬉しさに変わった瞬間、私はベンに抱きついていた。
「………大好き!」
返事の代わりにかえってきたのは、甘いキスだった。
―とある街のbarで。
(その日、愛しい人に出会えました)
*end*