第19章 とある街のbarで
「…そんな気、ないんでしょ」
少し呆れたように呟くような声で返した答えは、しっかりとベンの耳に届いたようだ。
「あぁ」
少し笑いを含んだような声に、私は気づく。
ベンの前では、泣き顔もあまり気になっていなかった事を。
普通は、安心して泣けるような相手ではないのに、ベンの声で、不思議と心がすぐに落ち着いた事を。
きっと、今私の顔が赤い事に、ベンは気づいていないから、これは内緒。
そうして連れてこられた、赤髪の船の甲板。
私がキョロキョロとしていると、考えている事がわかったのか、声をかけられた。
「安心しろ。今は誰もいない」
それはそれでどうかと思うのだけど。
「本当に、俺とこの船に来るか」
「何を今更。…でも」
私には、気になった事がある。
「私のどこがいいの?胸も色気もないのよ?スタイルが言い訳じゃないし…。ベン好みの可愛さや美しさを持ち合わせてはいないと思うのだけど」
…そう、何故私なのか、ということがどうしても分からないのだ。
「欲しくなったから、連れてきた」
そう断言されては、照れてそれ以上は言えなくなった。
そして、少し脱力する。私の頭の中には、ある考えが浮かんでいた。