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a piece of memory

第5章 『翼』


 向こう岸から、微かにサリアの声が聞こえる。
 きっと、怒ってるんだろうな。
 でも、他に方法がなかった。これで良かったんだ。
 どんな形であれ、俺と関わった人間を、奴らが放っておくはずがない。
 俺が奴らに勝つ見込みがない以上、こうするしかない。一対一ならともかく、こう相手が多いんじゃ、勝負にならない。
 サリアに出会わなかったら、サリアを助けなかったら、あるいは違う結末があったかもしれない。こんな風に見つからずに、逃げ切れたかもしれない。
 それでも、不思議と後悔はない。
 逆に、出会えて良かったとさえ思う。他人を信じずに生きてきた俺にも、信じられる相手を見つけることができた。だから、もう良い……。
「もう一度だけ言う。投降しろ、シルヴァ」
 一瞬だけ攻撃が止み、目の前の男が俺に投降を呼び掛ける。
 今の俺には、そんな言葉なんて、説得力の欠片もないのに。
「それで? また泥人形みたいに働けって? まっぴらだ!」
 俺が叫ぶと、それが合図だったかのように、奴らが一斉に襲い掛かってくる。
 何歩か後退った直後に、景色が逆転した。
 崖が崩れる音にまみれて、俺の身体は谷底に吸い込まれた。
 意識が遠のく。なのに、サリアの顔が見えたような気がした。
 ボロボロに泣いてる、子供のようなサリアの顔が。  
 
 * * *

 俺は翼が欲しかった。幼い頃から、ずっと、ずっとだ……。
 空を舞う鳥を見るたびに、羨ましくて。
 翼があったなら、きっと自由になれると、信じていた。
 けど、結局、自由にはなれなかったけど、俺は“翼”を見つけた。
 だから泣くなよ、サリア。
 短い間でも、俺は、空を飛べた気がするんだ……。
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