第2章 月下獣
「ついて来たまえ 敦君 何が食べたい?」
その少年……もとい敦君にそう問う治。ただ、彼の財布は川に流されているはず。と、言うことはすなわち治のなかでは勝手に国木田が払うと言う設定になっているのだろう。
「はあ……あの……」
「茶漬けが食べたいです。」
そうやや恥ずかしげに言いながらうつむく敦君。いや、なんと言うか色々とある中でそれ?それなの!?とツッコミたくなるような状況だ。お茶漬けは確かに美味しいが餓死寸前の食べ盛りの少年がまさか、お茶漬けを要求するとは思わなかった。
それはどうやら、治も国木田も同じようでポカンとした表情を浮かべ。ただ無言で少年を見ていた……のだがその静寂を破り治は笑い出すと、
「はっはっは!
餓死寸前の少年が茶漬けを所望か!」
「良いよ。国木田君に三十杯くらい奢らせよう。」
そう言った。やっぱり、治は勝手に国木田に払わせようとしてたのかと呆れつつ隣で怒りに震えている国木田の肩をポンッと叩き、
「ご愁傷様。」
と言っておいた。確かに払わせるのは可哀想なのだが如何せん私も財布を持っていない。国木田からの電話を受け“ またか…… ”と思いつつ呆れながらもここまで来たのだが、流石に社を出るときはこんな事態になっているなど想像もしていなかったため何も持たずに出てきたのだ。
「俺の金で勝手に太っ腹になるな太宰!」
そう怒鳴る国木田を横目で見つつ今度はそっと心の中で“ ご愁傷様 ”と呟いた。
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