第4章 A-Cという男
ふわりとした物が私の腕を掴むのを閉じた瞼の奥で感じていた。
それは人の掌の様で、私の手首辺りをゆっくり撫でるように触ってくる。その感触がくすぐったくて肩を身動ぎさせながら「ん……」と息をもらす。
誰?
私に触れているのは……
誰……?
「ん、ん……」
今度は小さな寝返りを打ちながらゆっくり瞼を持ち上げれば、眼前に見えた人影に私は息をのんだ。
「……っ」
バッと音を立てて飛び起きると同時に軽い目眩が襲い私は眉を寄せ口許を押さえた。
「大丈夫セトちゃん」
やわらかな声がそう言葉を紡ぎながらゆっくりと背中を撫でてくれる。
私はその声の主を驚きと焦りが入り雑じった目で見つめた。
「み、みのる、さん?」
何故……?
「ごめんなさい、勝手に部屋に入って。でもお義父様の研究室から出てくる所をみたものだから」
気になって……そう言ってPCと私を繋ぐプラグコードを物悲しげな瞳で見下ろした。
見られた。
みのるさんに。
どうするべきか。私の電脳は次に発するべき言葉を秒数でいくつも挙げていく。脳内は冷静なのに私の人としての心臓は面白いほどバクバクと動いている。
焦り。焦り。焦り。
でもふと考えた。何故私は焦るの? 確かにまだ子供である信彦には見られたくないと思ったわ。けどみのるさんは大人。ロボット心理学者。ロボット工学に携わる人。
慣れてるわ、こんな事。
「……ちょっと、ネットサーフィンを、して……ました」
ゆっくりと持ち上げた指先で耳の後ろにあるジャックからコードを抜く。ベッドから立ち上がるとPCの方にもさしていたコードをぬき纏める。
「ネットサーフィン?」
「眠れ、なくて。だからちょとだけ遊ぼうかなって」
「ダイヴしてまで?」
「……それは……つい昔からの癖で。PC画面から情報を追うより、直接電脳に流した方が楽だから。それでつい、あの……」
視線が游ぐ。