第4章 A-Cという男
「……ちょっと、ネットサーフィンを、して……ました」
ゆっくりと持ち上げた指先で耳の後ろにあるジャックからコードを抜く。ベッドから立ち上がるとPCの方にもさしていたコードをぬき纏める。
「ネットサーフィン?」
「眠れ、なくて。だからちょとだけ遊ぼうかなって」
「ダイヴしてまで?」
「……それは……つい昔からの癖で。PC画面から情報を追うより、直接電脳に流した方が楽だから。それでつい、あの……」
視線が游ぐ。
何故かしら、別に嘘を付いている訳じゃないのに。
ただ、ダイヴした場所がORACLEなだけ。そう、ただそれだけなの。
そのまま口をつぐんでしまった私に、みのるさんは小さく笑って「そう」と返した。
「知ってるとは思うけれど、#セト#ちゃんは脳は機械だけど身体は生身の人間よ。脳は普段身体機能を動かす為に動くの。だからそれ以外に使うと言うことは脳に余計な負担が掛かってしまうと言う事なの」
「はい、それはDr.に教わりました」
「そうすると脳と身体の……ん~繋ぎっていうのかしら? それがズレてしまって身体にも別の影響がでてしまうから。あまりダイヴは……お願い、しないで、ね?」
最後はどこか訴えかけるように言われ、私はただ頷く事しかできなくて……。小さく「ありがとうございます」と呟いてみのるさんの人間らしい温かみのある掌を握った__。