第1章 1
顔がいいから何でも似合うってか。晴れ着を見せに来たこどもみたいな事を言う彼に理解に苦しむ。顔がいいのはみんな知っているだろ。
「はっはっは~そうです」
人をおちょくる様な笑い声に、私はたぶん見当違いの事を言ったのだとわかった。でも、楽しそうに目を細めながら笑う上司のさきほどからの行動は、何一つ理解できない。理不尽さにイライラしてきた。
「帰っていいですか」と、イライラを隠さず呟く。今度は遮られること無く言い終えることができた。構いませんよ、私の頭を一撫ですると私も帰ります。となにやらご機嫌な様子で先に出ていった。
何なんだ。元凶はふらりと現れた。幕引きもあっという間だ。終始困惑を強いられ最後に私は呆然とその背中を見送る。
「帰ろ...」
何故か香水の匂いと頭に残る優しい手のひらの感覚が残りむず痒い。