第1章 1
このまま顔を見ず帰ろう。昼間と同じく顔が見れぬまのやり取りをし、お疲れ様です、と出ていこうとしたがドアの前に鬼畜眼鏡。
帰れない。何だ、終わらせて帰れと無言の圧力か。残りの書類の締切日を考えていると名前を呼ばる
「なんですか?帰って...」いいですか、と渋々顔を上げるとレンズ越しの赤い目とバッチり目が合ってしまった。気まずく目を逸らそうとした。
しかし、ふわりと上司の香水の匂いと顎に添えられた手により目をそらすことが出来ず、近づいてくる上司の顔をマジマジと見てしまった。
「な、なんですか」
今さら視線を逸らすのも負けた気がすると視線を合わせ睨み返すと彼は何故かご機嫌になった様な気がした。おもしろい玩具を見つけた子供のような笑み。
「やっとこっち見ましたね」
理解できない。という顔をする私には彼は続けた
「上司と会話するのに顔も上げないなんて失礼じゃありませんか?」
確かにそうだ。まかさこの状態で不躾を叱られると思わず素直に謝罪する
これには反抗心とか敗北感などと言ってれす恥ずかしさに目を逸らした
「どうかしましたか?何か上司に目も当てられないほどの後ろめたい事でも。」
「いえ、そんなことは」
「ではなぜ?」
「..無駄に容姿の良い人間への僻みです」
見惚れそう、なんて声になったのか
わからない息を小さな語尾として発した。大佐の容姿は確かにお世辞じゃなくてもいいから別に部下が言っても失礼じゃないだろうと思い悔しいさから無駄な、まで付けてしまった。
怒られるかと思ったら、なるほど。と顎にあった手は頬をやさしくなでられた。
「!?」
声にならない、突然の行動にびっくりし目を見開き上司を見る。何を考えているんだ。混乱した私にさらに追い討ちをかけるように
スッと息がかかると思うほどに顔を寄せてきて来た。後ろに避けようとした体はいつの間にか腰に添えられた手に阻止され、ただただ驚く事しかできなかった。そして
「見惚れてください」
耳に息。ぞわりとして、言葉の意味も理解出来ず固まる。抜け出して来たかいがありましたね、なんて言ってる上司の顔を見る。
「なんですか、自慢ですか」
からかっているだけだと、冷静を取り戻す。