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炎の華と氷の心

第8章 ポートガス・D・エース


「……言葉はいらねぇぞ……一つ聞かせろエース……。……おれががオヤジでよかったか……?」
「勿論だ……!!!」

エースがそう言うと、白ひげは「グララララ」と笑った。
そしてエース達は白ひげの命令の元、後ろ髪を引かれる思いを噛み締めつつ戦場を退避していく。
そこへ、逃がしてなるものかと海軍大将・赤犬を先頭に追撃部隊が迫る。

「サカズキさん!」
「リラか。さっさと白ひげ海賊団を追いかけんかい」
「……っ、はい!」

大きく返事をし、エース達を追おうとする。そこへ、思いがけない言葉が飛んで来た。
それは赤犬からエースに対する挑発だった。

「本気で逃げられると思うちょるんか……!めでたいのう。エースを解放して即退散とは、とんだ腰抜けじゃのう白ひげ海賊団。船長が船長……それも仕方ねェか……!“白ひげ”は所詮……先の時代の“敗北者”じゃけェ……!」

赤犬の言葉にエースは足を止めた。

「敗北者……?取り消せよ……!今の言葉……!」
「エース!?」

ルフィが止めるが……敬愛するオヤジ──白ひげを馬鹿にされて、黙っていられなかったのだろう。そしてその戦法はことエースにはよく効く。

「お前の本当の父親ロジャーに阻まれ、王になれず終いの永遠の敗北者が白ひげじゃァ。どこに間違いがある……!オヤジ、オヤジとゴロツキ共に慕われて……家族まがいの茶番劇で海にのさばり……」
「やめろ!」

エースが叫ぶ。

「……何十年もの間、海に君臨するも王にはなれず……何も得ず……!終いにゃあ口車に乗った息子という名のバカに刺され……!それを守る為に死ぬ!実に空虚な人生じゃあありゃあせんか?」
「やめろ……!」
「“白ひげ”は敗北者として死ぬ!!ゴミ山の大将にゃあ誂え向きじゃろうが!」
「“白ひげ”はこの時代を作った大海賊だ!!」

リラにはエースの気持ちが痛いほど伝わった。彼がオヤジと慕う白ひげを──自分を救ってくれた男を馬鹿にされて、怒らない人間はいないだろう。
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