第5章 近づく心
薄っすらと、体の感覚が戻ってくる。
瞼から、淡い光が差し込んでくる。
頭がゆっくりと覚醒してくる。
そんな、起きる直前の独特の感覚にアイリーンは身を置いていた。
いつもの起きる時間は、体にすっかり馴染んでしまっていた。
時計も、起こしてくれる人がいなくても。
体内時計というものは、どんな状況でも正確で。
「……ん~。もう、朝かな…………」
まだ少しだるい腕を、瞼に擦りつけて目を覚ます。
窓の外から、わずかに光が差し込んでいるのをみて、やはりいつもの時間なのだと確認をした。
体に掛けているいつもの毛布に手を掛ける。
………あれ、いつもと手触りが違う気がする。
ぼやっとした頭を働かせて、目の前の光景を見つめた。
そこにあるのは、いつものくすんだ色をした自分の毛布ではなく、綺麗に洗濯されている白地の毛布。
寝ころんでいたシーツに目を向けても、やはり白地の綺麗なシーツ。
……何かがおかしい様な。
ベッドから視線を部屋の中へと彷徨わせると、アイリーンはビクっと体を震わせた。
(…………なんで、ここにリヴァイさんが……!?)
一気に覚醒した頭で、今の状況を整理しようとするも
混乱しすぎていて一向に考えが纏まらない。
(落ち着け私……! 一つずつ、考えるのよ私……!)
ふぅ。と深呼吸をすると、ふわりと香るリヴァイの香り。
頭がくらくらしそうになる、その少し甘い香りにまた思考が停止しそうになる。
「と、とにかく。リヴァイさんに毛布かけなくちゃ……」
アイリーンが視線を向けた先には、ソファーの上で腕枕をして目を瞑るリヴァイの姿があった。