第2章 ようこそアリス
「お前さんは紡であってアリスでもある。…わかる?お兄さんの言ってる事」
思考回路がどんどん混乱していく。
私であって私じゃない…?不思議の国なんておとぎ話みたいな事…。
「あー、おとぎ話ってとこかな」
「!?」
私の頭の中を読んだかのように話を続ける大和さん。
「まぁ、ここにいる人達は同じ顔に見えて別人ってとこ。…まぁ、たまたま名前も同じみたいだけどな」
木の上でゴロゴロしながら話す大和さん。
まるで猫みたいって思った事は口に出さずに質問する。
「あの、じゃあ私は、その[おとぎ話]に迷い込んだ…って事ですか?」
「そんなとこ。あと俺は猫じゃないからな」
「え、なんでわかっ…」
また質問しようとしたその時、大和さんはふわりと姿を消してしまった。
「ま、どうせならこの世界も楽しんでったら?アリス」
この一言を残して。
「全く、あなたはすぐ城から抜け出す…」
「だからごめんって…」
自分の城に戻った赤髪の青年、リクは黒髪の青年の小言を聞きながらも、さっき出会った彼女の姿を思い出す。見た事の無い人。…なのに自分の名前を知っていた。
「私の話を聞いていますか?」
黒髪の青年は呆れた表情でリクを見る。
「え!?あ、うん!」
慌てて返事をするも、黒髪の青年はため息をこぼす。
「しっかりしてくださいよ…。フルムーンの力で時空に歪みが出来てしまっているんです。だからいつ、お告げのあの人が来るかわからないんですよ?」
「あの人?」
「だから…」
黒髪の青年は、2回目のため息を零す。
「アリス、ですよ」