第2章 ようこそアリス
「…、…っ」
誰かの声が聞こえる。どこか聞き覚えのある、声。
「…ぇ、大丈夫?」
この声…陸さん?
目を覚ますと、目の前には心配そうな陸さんの顔があった。
「すみません、大丈夫です」
「良かったぁ。…あの、君はどこから来たの?」
どこから?
その言葉に違和感を覚えた私は、周りを見渡した。…すると、そこには見た事の無い風景が広がっていた。
どこだろう?私は確か、仕事帰りにきなこを見かけて…追いかけて…公園について…!そうだ、私、大きな穴に落ちて…!
「わ、私…死んだの…?」
思わず声が震える。
地盤沈下とか何かが起きて、それに私も巻き込まれて…。
「?生きてるよ?」
素っ頓狂な陸さんの声。
「君は面白い人だね!名前はなんて言うの?」
…あれ?生きてる?じゃあ夢?
「紡…小鳥遊紡です、あの、陸さん…ですよね?」
忘れられてるなんて…酷い夢、あるはずが…。
「紡ちゃんだね!…ねぇ、どうして僕の名前知ってるの?」
「え…?」
「どこかで会ったかな?でも初めましてだよなぁ…」
あった、酷い夢だった。マネージャーを務めて1年経って、仲良くさせていただいてるのに…なんでこんな夢…。
「リクさん!何処にいるんですか!」
あれっ…この声…。
「わわっ、大変だ…ごめんね、俺もう行かなくちゃ!」
「あの…っ?」
「紡ちゃん、またどこかで!」
そう言うなり身を翻し、駆け足で何処かへと去ってしまった。…陸さん、あんな衣装あったっけ…?赤を基調にしたフリルのついたドレスの様な衣装…メルヘンドリームの衣装でもないし…。
「あーあ、最初からあの子に会っちゃうとは…お前さんも運がいいんだか悪いんだか」
ふと頭上から声がした。
この声も聞き覚えのある…!?
「や、大和さん!」
「おー。元気のいいアリスだこと」
大和さんが可愛い衣装で木の上にいるなんて珍しい…ん?アリス?まさか、大和さんも覚えてない…?
「あの、覚えてないですか?私、小鳥遊紡です!」
「お兄さんは何でも知ってるよー。でも、ここでは違う」
違う…?
「あの世でもなければ夢でもない…不思議の国ってとこかな?」
不思議の、国…。