第6章 混乱と異変
「…かな?」
「…なさそう…」
誰かの声がする。安心する、この声。
「何か…って呟いて…」
「…倒れちゃったんだ…」
倒れた…?あれ、私…?
「私…っ」
目を開けると真っ白な天井が視界に入る。
「あっ、起きた!アリス大丈夫?体調はどうかな?」
「目覚めてすぐの彼女に話しかけるのは失礼でしょう、リクさん」
この声、やっぱり…!
慌てて上体を起こして辺りを見回すと不安げな赤色とツンとした黒色が目に映る。
「陸さん、一織さん…!」
ホッとしたのも束の間、すぐに大和さんの言葉が脳裏に浮かぶ。
ーーー同じ顔に見えて別人ーーー
この2人も、私の事わからないんだ。
ふと、そんなショックが自分を襲う。
「大丈夫?3日も寝てたけど…」
陸さんが心配そうに私の顔を覗き込む。
私、そんなに寝てたんだ…。
「あ、大丈夫です…」
「あまり大丈夫には見えませんが」
呆れた様な表情を浮かべる一織さん。
「…ここは客室の一つなのでゆっくりと体を休めてください」
その言葉にふと、我に返る。
そうだ…ここは?確か倒れた時は…オレンジが基調の明るい部屋で…。
私の様子を見て察したのか、一織さんは丁寧に説明してくれた。
「勝手ながら先程まで貴女がいた兄さんの家から場所を移させていただきました。ここでは警備や医療など様々な設備が整っている故、黒の国からも狙われにくくなりますし…少しでも休められるかと」
「ありがとうございます…」
とりあえずすごい場所なんだ、と察した。
「そんなかしこまらなくたっていいのに…俺達の事知ってるみたいだし、仲良くなりたいな!」
ぱぁっと明るい笑顔で話しかけてくる陸さんにつられて、自分も思わず笑みがこぼれる。
この世界の人は顔だけじゃなくて性格も同じなんだ…。
ふとそんな事を思いながら。
その頃、国境の境に揺れる影が二つ。
「ガクが失敗するなんて珍しいね」
「うっせ」
ガクは不機嫌そうに顔を顰め、呟く。
「また小言が飛んでくるんだろうな…」
その呟きにもう一つの影が反応する。
「あはは…まぁ、大丈夫だよ」
その時、塀の向こう…黒の国の方から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ねぇ、そこにいるんでしょう?」
「…テン」
震える手を握り締めて、淡い桃色は覚悟を決める。
「次の仕事…頼んだよ」