第4章 アリスの役目
「壮五さん、私の事…知ってるんですか?」
自己紹介してないのに[アリス]って呼んでる。
「さっきミツキさん達が君のことを[アリス]って呼んでいたから。…アリスで合っているかな?」
「はい。あ、でも私…小鳥遊紡と言います」
なかなかに[アリス]呼びに慣れないな…。
そしてやっぱり壮五さんも私がわからないんだ…。
「あ、さっきのサイレンって一体…」
尋ねようとした時。
壮五さんは柔らかい笑みを浮かべて私の言葉を遮った。
「ここで立ち話も良くない。中へどうぞ」
壮五さんに促されるまま、豪邸へと足を踏み入れる。
「わぁ…」
思わず辺りをキョロキョロと見てしまう。そうしてしまう程このお屋敷がとても豪華で。
「ふふ、喜んで貰えて嬉しいよ」
「ご、ごめんなさい…つい…」
クスクスと上品に笑う壮五さん。
「自由に散策してくれても構わないよ」
「いえ、遠慮します…」
間違いなく迷子になる。
そう確信した私は大人しくソファーに腰掛けた。
そして、一度奥へ姿を消した壮五さんが現れたタイミングで質問を投げかけてみる。
「あの、さっきのサイレンって何があったんですか…?」
目の前のテーブルに壮五さんがオシャレなティーセットに紅茶を置く。
いい香り…。
柑橘系の香りが鼻腔をくすぐる。
「どうぞ。紅茶でもよかったかな?」
「あ、はい!」
「良かった。…気になるよね、サイレン」
紅茶を飲み、話を続ける壮五さん。
それに続いて私も紅茶を飲む。
わ、すごく美味しい…!
「あれは危険を知らせるサイレン…黒の国が動いたんだ」
「黒の国…」
また耳にした[黒の国]のワード。
「きっと君の存在が知られてしまったんだと思う」
「え、どうして私が?」
「君はアリスだからね…君の力はこの世界を変えるんだ」
「え…?」
話が大きくなってきた、世界を変える力?そんなもの持ってない。
「ソウ、まずはアリスの存在について話すべきじゃないか?」
不意に後ろから声がして振り返る。
そこには大和さんの姿があった。
「ヤマトさん…また勝手に入ってきて」
「いーじゃんか、1番居心地良いんだよここ」
仕方ないですね、とため息を零す壮五さん。
それを見た大和さんは弧を描いた口を開き、話を続けた。