第3章 騒がしいお茶会
どうやら本当らしい。三月さんも環さんもナギさんも、私の突然の発言を不思議に思っている。
「お前さんにしか話しかけてないからねー。まぁそれより…お前さんはアリスで合ってるんだよ」
「アリスで合ってる…?」
「そ。他の世界から迷い込んだ人物…それがアリス。だからお前さんは[アリス]の[紡]」
えっと…この不思議の国?に入ってきちゃった人、つまり私を[アリス]。それで私は[紡]…あ、もしかして[観光客]とか[外国人]みたいなくくり…?
「おー、物分り早いとお兄さん助かっちゃう。でも話し過ぎも悪い事だし…またな、紡」
声が消える。
…なるほど、そういう事だったのかー…って、あれ、私喋ってないのに会話成立してた…!?
「大丈夫か?アリス」
三月さんの声で我に返る。
「すみません、大丈夫です!」
そうして、ようやくお茶会が始まったのであった。
「アリス、このケーキどう?」
「このキャロットケーキすごく美味しいです!」
「良かった!実は俺が作ったやつなんだ!」
「すごい…!器用なんですね!」
三月さんの手作りケーキをいただいたり。
「アリス、この紅茶お口に会いますか?」
「はい、まろやかですごく飲みやすいです!」
「あなたの為にブレンドしました、喜んでもらえてワタシhappyです」
ナギさん特製の紅茶をいただいたり。
「アリス、これんまいよ」
「わ、このプリンもカラメルがほろ苦で美味しい…!」
「へへっ、だろー?」
環さんの大好きなプリンをわけていただいたり。
なんだかメンバーの寮にいる時みたいでホッとした事は自分の中に取って置くことにする。
そうして穏やかにお茶会を過ごしていた時、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「何っ…!?」
「こ、の音…!ナギ、タマキ、アリス連れて屋敷に戻るぞ!」
「何!?みっきー聞こえなかった!」
「ワタシ聞こえました!アリスこちらへ!」
何が起きたかわからないまま、ナギさんに手を引かれて走り始めた時。
「大丈夫。こちらへ」
サイレンがこれでもかというくらい大きく鳴っているのに、その柔らかい声がふわりと耳に届いた。知ってる、この声も…。
「壮五さん!」
振り向いた先には、優しい笑みを浮かべた壮五さんがいた。