第1章 出会いはいつだって突然に
どきん、どきん、どきん、どきん。
さっきーーーーーーー彼を見たあの瞬間から、心臓の音が鳴り止まない。
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イギリスはロンドン、キングズクロス駅。前後左右どこを見ても人人人人人人人人。スーツを着こなした会社員。これから旅行と思われる大荷物の女性。カバンを持った小さな子供達。朝から大賑わいだ。
どの人も忙しそうに、電車が来るのを待っている。
ここ、キングズクロスに来て電車に乗らないのなんて一部の…私たちのような人くらいだろう。
朝のラッシュで乗り損ねたおじさんを横目に、私は荷物いっぱいのカートを押し、ホームの入り口へ向かう。
一見、ただの柱。この巨大な駅を支える柱の一本。
だが、ここが別世界に通じる入り口など誰も知らないのだ。
柱に向かい、小走りになる。
自然に、自然に。
少し操縦を間違ってしまった、柱にぶつかる…そう見えるように。
少し足を早める。
ああ、これからを思うと、またペースが上がっていく。