Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第5章 なまリクII♡高齢者さま
着いた先は、意外にも松岡さんの自宅マンションで…
「入れ」
と、促されて入ったはいいけど、自分の身の置き所が分からなくて、俺は通されたリビングのソファーに座ったまま、視線一つ動かすことが出来ずにいた。
「ビールでいいか?」
「は、はい…」
思わず声がひっくり返る。
「なんだお前ぇ、緊張してんのか?」
「いや、別にそういうわけじゃ…。あ、あのコレ…」
俺は膝の上に抱えていた小さな箱を、ガラスのテーブルの上に置いた。
「おっ、いつも済まねぇな。あんま気ィ使うな」
いや、使うでしょ普通…
毎回毎回奢って貰ってたらさ…
「あ、あの今日は彼女さんはいないんですか?」
俺のバカ、なに聞いてんだよ…
言ってしまってから、酷く後悔の念に駆られる。
こんなこと聞いたって、自分が辛くなるだけなのに…
なのに俺は一度走り出したら止まれなくて…
「いやぁ、流石松岡さんの選ぶだけの女(ひと)ですね。この部屋の掃除も彼女さんがしてくれてるんでしょ?」
忙しい松岡さんの事だ、きっと自分で掃除なんてしてないだろう…
俺はそう思っていた。
でも、
「はあ? お前ぇ、さっきから何ワケの分かんねぇこと言ってんの? 俺、彼女いねぇぞ?」
あ、そっか…そうなんだ…
「って、嘘でしょ? だって松岡さんモテるし…」
事実、女子社員がこっそり行っていた、“かっこいい男性社員ランキング”では、常にランキングのトップにいたし…
その松岡さんに彼女がいない、なんて誰が信じるって言うの?
「あんなぁ、お前ぇ全然分かってねぇのな?」
えっ、お…れ…?
「俺が惚れてんの、お前ぇだから…」
へぇー、“俺”ね…
「えっ、ええっ…、俺?」
嘘でしょ…?
それはそれで嬉しいけど…