Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第5章 なまリクII♡高齢者さま
和に夕食は潤くんと取るように伝え、俺は店の軒先で小さな箱を抱えて立っていた。
しっかりダウンまで着込んでいるとは言え、風が吹けば寒さに肩が竦む。
「寒っ…」
思わず口から零れた時だった。
通りの向から、一際目を引くスポーツカーが、近所迷惑もお構い無しの爆音を響かせながら、こちらに向かって走って来て、俺の目の前でピタリと停まった。
「おう、待たせたな」
運転席の窓が開き、顔を出したのは松岡さんで、
「寒ぃだろ、早く乗れ」
助手席を親指でクイッと刺すから、俺は挨拶もそこそこに、いそいそと車に乗り込んだ。
「車、新しくしたんですね?」
前乗ってたのは確か、大人数で乗れるワンボックスタイプの車だったのに。
「まあな。もうデカいのは必要ねぇからな」
そう…なんだ…
「因みに、助手席に人乗せんの、お前ぇが最初だ」
「えっ、お、俺…?」
彼女でもなく、俺…?
それはそれで嬉しいけど、ちょっと気が引けるな…
俺は膝の上に置いたケーキの箱を、キュッと抱え込んだ。
「あ、あの、今日はどこへ?」
そう言えば行き先聞いてない。
「ん? ああ、言ってなかったか?」
聞いてませんけど…ってか、聞こうとしたら一方的に電話切ったの松岡さんなんだけど…
結局俺は行き先を知らされることなく、ただ車に揺られ、車窓を眺めていた。