Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第10章 俺達のスペアキー
コーヒーの香ばしい匂いに、ゆっくり瞼を持ち上げる。
ホントはもう少し寝てたいけど、潤が豆から煎れてくれるコーヒーの方が、睡眠欲よりも断然魅力的だ。
俺は気怠さと、ほんの少しの痛みを感じる身体を起こし、Tシャツだけを頭から被った。
パンツは…どこ行ったか分かんないんだけど、シャツの裾長いし、多分見えないだろう。
「おは…よ…」
寝室のドアを開けて、キッチンに立つ潤の背中に声をかける。
「お、起きたんだ? もう少し寝てても良かったのに…」
「うーん、そうしたいとこだったけど、コーヒーのいい匂いに目が覚めちゃったんだもん」
「そっか。あ、コーヒー飲むだろ? 今煎れてやるから待ってろ。それから、ソレ…」
ん?
潤が乱れた前髪を掻き上げながら、ダイニングテーブルの上の箱を顎でしゃくって見せた。
「何これ?」
「さっきパパさんが持ってきてくれてさ…」
パパが…?
なんで…?
「開けてみりゃいいじゃん」
箱を眺めて首を捻る俺を見兼ねたのか、潤がポット片手にドリップをしながらクスリと笑った。
「そうだね…」
見た感じは、多分ケーキだろうと思うけど…、なんでわざわざここまで…?
俺は更に首を捻りながら、箱にかけられた黄色いリボンをゆっくり解き、蓋をそっと開けた。
えっ、やだっ…
「もぉっ…パパったら…」
俺、もうちっちゃい子供じゃないのに…
でもパパ覚えてくれてたんだね、ピ〇チュウのバナナケーキなんて…