第1章 転がり落ちた先の、春。
普段だってそうだ。
が若松や桜井に視線を向けるだけで胸の奥がざわついている。
「」
「んー?」
顔を上げたと青峰の視線が絡む。
「約束」
「え?あぁ、言う事聞けーってヤツ?ハイハイ、何を奢りましょーか」
何か食べ物を奢るのだと未だに思い込んでいるに、青峰は衝撃の一言を放つ。
「俺の事、好きって言え」
持っていた赤ペンが、手から転げ落ちる。
青峰の言葉を頭が中々理解出来ずにいた。
「…青峰、くん?」
「言う事…聞くんだろーが」
ベッドから体を起こして座ってこちらを見る青峰の顔は真剣だった。
普段ふざけたり、からかったりする時の様な顔じゃない。
おれのこと、すきっていえ。
頭が漸く言葉を理解した。
「……っ//」
気付けば距離を詰められてしまっていた。
伸びてきた長い腕は簡単にを捉え、ベッドへと引き上げられてしまう。
青峰の上に乗る形になり、意識して顔を上げていないと吐息をも感じる距離になってしまう。
「お前、かっりーな…もっと肉食えよ」
「……!?///」
藻掻こうにも逞しい腕が二本、しっかりと腰をホールドして放さない。
「お前が他のヤツ見てんのムカつくんだよ、だったら俺のモンにするしかねーだろ」
「お、俺のモンて……!//」
「んだよ、嫌なのかよ」
「嫌とか…そういう問題じゃ…!それより放して…!は、恥ずかしい!//」
「お前がちゃんと言えば放してやるよ」
今までクラスメイトだとか、チームメイトだとか、そういう距離感だったのに。
初めて踏み込んだ距離に、は青峰を一人の男として意識してしまった。
一度そう見えてしまったら、もう元には戻れない。
そしてこんな時に思い出してしまう。
何時だか桃井に言われた事がある。
「言えよ、」
「わ、私…///」
恋とは、転がり落ちるなのだ、と。