第3章 A DEER
場の流れで始まったババ抜きは、やってみると案外盛り上がる。
青峰も誘ったけれど彼は遠慮し、相変わらずひとりベッドに寝転がりテレビを眺めていた。
の手の中の札は、あと2枚。
うち1枚はジョーカーだ。
勝敗のカギを握る、運命の1手。
今カードが引かれる、そのとき。
ドアをノックする乾いた音が響いた。
扉は、内側からカギをかけている。
「おーい、開けろー」
見回りの先生だ。
ドアノブが回ろうとして金属が噛み合う音に恐怖を感じる。
バレたら、楽しい修学旅行が台無しになってしまう。
の相部屋の彼女は彼氏に手を引かれユニットバスに連れていかれた。
嘘でしょ!私も連れてってよ!
返事がない場合マスターキーで扉を開けると宣言していた先生は、そろそろカギを開けてしまうだろう。
恐怖と動揺に固まって動けないは、腕を引かれ、いつの間にか布団の中の暗闇で、知らない温もりに包まれていた。