第3章 A DEER
その日の夜のこと。
宿泊先の部屋は2人1組ツインの洋室だ。
何の配慮か同部屋の相方は先生がランダムに決めたクラスメートだったけれど、嫌いじゃない子でよかった。
大浴場からあがり浴衣に着替え、スキンケアも施し、明日の準備も終わりあとは寝るだけと背を伸ばしたときだった。
「…。お願いがあるんだ」
相部屋の彼女は決して嫌いじゃないけれど、悪い癖がある。
学年でも有名な、『バカップル』だということ。
ホテルの廊下。
たちは見張りの先生が来ないか体を緊張させながら、ある部屋をノックする。
「お待たせ」
「遅いから、来ないと思った」
出迎えたサッカー部の彼氏が愛おしそうに彼女の頬を撫でるのが視界に入れば、本人たちより見ているこちらが照れてしまう。
慌てて目を逸らせば、この部屋のもうひとりの主をみつけた。
ベットに寝転がりテレビを眺めているのは、
「あ、昼間の!」
「…なんだ、シカ女じゃねーか」
『大ちゃん』だった。
「鹿?ってか2人、知り合い?」
「偶然!、良かったじゃん。ねぇねぇ、トランプ持ってきたんだー」
…これはあくまで予感だけど、物凄く、面倒なことに巻き込まれそうな気がしています。