第2章 SUMMER RAIN
は口の端を下げて、目の奥に悲しみを湛えている。
平手打ちは怒りからの衝動だとばかり思っていたのに。
口周りについた唾液を手の甲で拭ったはおもむろに立ち上がり、窓の外を見た。
「…雨、止んだみたいだね」
埃や塵が洗われた空は青と黄色のコントラストが美しく、どこかにきっと虹を咲かせているのだろう。
「本当はね、大ちゃんが部活に行ってないのも、知ってたよ」
そう弱々しく呟いたの背中は、昔からこんなにも小さかっただろうか。
「ずっと」
彼女の肩が微かに震え出す。
「それを聞いてからずっと、会いに行かなきゃって思ってた。辛いよね、だってあんなにバスケが好きなのに。でもなんて声かけて良いか分からなくて、どんな顔すれば良いか分からなくて、会えなかった。ごめんね、仲間なのに」
大粒の水滴が目から溢れて止まぬは、声も途絶え途絶えに何かを伝えようとしている。
その一生懸命な姿は、やはり惚れた女そのままで、
『ごめん、同情だったのかな、ごめん』
後悔やら悲しみやら積もり積もった感情を剥き出しにする彼女を眺めていたら、青峰は自分の事なんてどうでも良くなって、彼女を守りたいと思ったら、ああ好きなんだと、思い知らされる。
「で…でも…うっ、ずっと…大ちゃん…あ、頭から…ひっ、離れ…なくて」
『会いたかったんだよ』
が好きだと、思い知らされる。
青峰は彼女を抱きしめた。
衝動だった。たとえまた叩かれても構わないと思った。
共鳴していた心臓の音が引き合い、重なって、大きなひとつの音を奏で始める。