第2章 SUMMER RAIN
麦茶とお菓子を頬張りながら、は楽しそうに自分のことを話してくれた。
入ったゼミがハズレで、早くも卒業論文の作成に追われていること。
就職先をどうするか奮闘していること。
今でも、大好きなバスケを続けていること。
彼女が全力でバスケに向かう姿に惚れていた。
は昔から、何も変わらない。
「大ちゃんは部活どう?バスケ、楽しい?」
それに比べて、今の俺はーー
と2人、バスケに夢中でいつまでも遊んでいたあの頃の感情を思い出すと、蓋をしていた葛藤が胸の奥から暴れ出して、心臓に穴を空けてしまいそうだ。
大好きなバスケに向き合えば向き合うほどにつまらないと思うなんて、どうかしている。
「…大ちゃん?」
天賦の才故の苦悩に青峰が顔を歪ませていると、こちらを窺い見るが目に映り込んだ。
…そんな顔、すんなよ
をぎっと睨みつける青峰の瞳には悲しみが浮かんでいて、は目が離せない。
憂いに唾を飲む。そのとき。
は白く柔らかな指の腹で青峰の頬を摩れば、その唇に柔らかなキスをした。
多くの感情が渦巻きぼやけていた青峰の視界が、瞬時に晴れていく。
「ごめん」
キスをしたのは自身だというのに戸惑っている彼女の頬は、赤く色付いてた。
「大ちゃんを助けてあげたいって思ったら、体が勝手に動いて、その、なんで、こんなこと。ごめん」
はガラスのコップに入った麦茶を勢いよく飲み干すと、後悔と羞恥心から両手を額に添え俯いている。
青峰は、何も応えずにしばらくを見つめた。
彼女から漂った化粧の甘い香りは鼻にこびついた。
キスの暖かな感触は痺れるように唇に残っている。
彼女の真意を、彼女の奥底を知りたい。
「…、好きだ」
肩をピクリと跳ねさせたは、恐る恐る青峰の方に目を向けた。
その瞳は震えるように揺れている。
「ずっと好きだった。お前以外、好きになれなかった。なんで、キスしたんだよ」
2人の心臓は、今にも体から飛び出しそうなくらいに共鳴していく。