第2章 SUMMER RAIN
青峰はもてなされるがままに風呂を借りた。
冷えたとはいえ今は夏だ。
熱いシャワーを浴びれば、体はすぐに熱を取り戻す。
風呂から出ると洗濯機の上には着替えが用意してあった。
今はもう家を出て就職しているの兄の物だろう。
たまにチームに顔を出していた彼も今の青峰と同じくらいに背が高く、バスケがとても上手かったので、よく覚えている。
黒のパーカーとグレーのスウェットパンツは、サイズも丁度良く着心地が良い。
青峰はリビングに向かうが、そこにの姿はない。
2階に上がり彼女の部屋をノックすれば中から返事が聞こえる。
部屋に入れば、は捨てられない物が詰まった「宝箱」と呼ばれるカラーボックスを漁っていた。
昔1度だけ幼馴染と邪魔したことがあるこの部屋。
机の横に整頓されたバスケグッズも、本棚に入ってる少女漫画も更新されているけれど、あの時感じた胸をくすぐるような甘酸っぱい匂いはそのままだった。
「大ちゃんとの思い出、入ってないなぁ。バスケばっかりだったもんね」
お茶を持ってくると彼女は立ち上がる。
「もう帰んぞ」
「…雨、まだ止まないよ」
窓の外を眺めれば遠くに晴れ間は見えるのに、大粒の雨は未だに窓を叩きつけている。