第2章 SUMMER RAIN
蒸し暑く、体が気怠い。
帰りのホームルームが終わればひとつ大きなあくびをし、部活をサボると心に決めていた青峰は小煩い幼馴染に捕まる前にと鞄を手に取り歩き出す。
何もない空を見上げながら寝転ぶのにお気に入りの場所は屋上だった。
しかし今日は真っ直ぐ昇降口へと向かう。
予約していた写真集が入荷したと、メッセージが入っていたからだ。
どこか顔を綻ばせながら向かった本屋のレジで予約表を提示すれば、店員が奥から取り出した写真集の表紙には大好きなグラドルの『マイちゃん』が写っている。
雨に打たれたのだろうか、水が滴る、色気のある表情のアップ。
鼻の下が伸びるのを堪え、それを大切に鞄にしまうとご機嫌で自宅へと急いだ。
その途中、水滴がひとつ、青峰の頬に溢れる。
嫌な予感がした。
案の定、大粒の雨がぽつりぽつりとアスファルトを色濃く染め、次第にざぁざぁと身体中を濡らしていく。
夕立だ。
「…なんで今日なんだよ」
自身はいくら濡れても構わないが、写真集だけは死守したい。
どこか避難出来る場所をと、青峰は屋根付きのバス停を見つけると全力で走った。
生憎、部活に使う着替えやタオルは学校に置いてきた。
バス停の屋根の下、手の甲で顔についた水滴を振り払うけれど、濡れた髪からいくらでも水が滴り落ちてくる。
頭をぶんぶんと横に振ってみても体に纏った雨が全て飛んでいくはずはなく、舌を打ち鳴らした。
遠くの空には晴れ間が見えるから、これは夏特有の通り雨なのだと気が付いた。
しばらくすると定刻を迎えたバスがやってくる。
バスからは1人降りてきたようだが乗る者は誰もいない。
運転手の視線を感じた青峰が「違う」と手を横に振れば、バスは次の目的地を目指して灰色のガスを撒きながら発車していった。
「どーすっかな」
いつになったら、雨は止むのだろうか。
「…大ちゃん!?」
それは偶然の再会だった。
「…?」
目を丸くして驚く背の高い女性は、綺麗だった。
青峰の心臓は、飛び跳ねた。