第8章 イノセンスの能力
「散らかってて悪いね」
コムイはそう言いながらソファの上に置いてあった書類をどかしアランが座るスペースを作る。
アランがソファに座ったのを確認すると自分もいつも座っている席に座る。
静かに息を吸うとコムイは口を開いた。
「それで……話っていうのは……?」
「私……正直……死ぬ覚悟なんて全然ありません……。やり残したことだってたくさんありますし、死にたくもありません。でも……私は……未来を守りたいです。愛する人たちとともに生きる未来を守りたい。エクソシストになる理由が……それではいけませんか?」
アランはそれだけ言うと、黙ってコムイのことを見つめた。
「エクソシストになる理由なんて人それぞれだ。僕だって、この立場についたのも、すごく個人的で勝手な理由さ。愛する家族のそばへ行きたい。最初はそれだけだった。でもね、いつの間にか大切な人が増えていって、それはいつしかこの教団すべてになった。もちろん、君もそのひとりだよ。一緒に、みんなを守ってくれるかい?」
コムイはアランの前にしゃがみ手を取り微笑みながら言った。
「ありがとう……ございます……。私も……皆さんを守りたいです」
会ったばかりなのに、私のことを家族と言ってくれる。
ここには温かい人が沢山いるんだ……。
アランはぼやける視界を無視して、そっと微笑むとコムイの手を握り返した。
「よろしくお願い致します」
「うん、改めて、ようこそ!黒の教団へ!」