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ただの女、男二人【進撃の巨人】

第3章 面影




『よお、ビアンカ。今日も生きてるな』

『ケニー…また来たの?』

『助けた奴が母親の後でも追ってみろ。気分悪ぃだろ?なあ、それ夕食か?』

『そうだけど…』

『じゃあ、また後で来るわ』

『は!?またうちで食べてく気?』


ケニーは頻繁にビアンカの家を訪れる。
そして様子を見に来たと言っては、食事をして帰っていく。
これは一種のタカリではないか?
ビアンカはそろそろそう思い始めていた。


今回の一件を洗いざらい知っても、あの男は腫れ物に触れるような扱いはしない。
それどころか、もう少し気を遣ってはくれないかとさえ思う。
まあそれでも、同情されるよりはよっぽどマシだ。









『今夜は豆のスープか?トマトスープのが好みなんだがなぁ…』

『文句言わないで。ていうか、何であんたの好みを聞かなくちゃいけないの?』

『わかった、わかった。そうカリカリすんなって』

不機嫌になるビアンカを横目に、ケニーはスプーンを手にしてスープを啜った。




『ねえ、あんたが "切り裂きケニー" って、本当なの?』



ビアンカはずっと頭に引っ掛かっていたことを、思い切って口にしてみた。
こんなに図々しくてふざけた男が憲兵百人を殺した殺人鬼だなんて、信じられない。



『…ああ』



ケニーは口の端を吊り上げた後、あっさりそう答えた。


『なんでそんなことしたの?』

『色々あったんだよ』

『色々って…そんなに人を殺した理由は何?』


話を逸らすケニーに、ビアンカは問い詰める。



彼の声色は、突然変わった。



『それを知ってどうする?』



ビアンカを見る目は笑ってはいなかった。
聞くな、と言っている。
普段多弁な男が、それきり口を閉ざした。




殺人はどんな理由があろうと許される行為ではない。
けれど、その許されない行為をケニーが代わってくれたからこそ、今の普通の暮らしがある。
肯定するつもりはないが、責める気もない。


今のは単なる興味本位。
そして、決して興味本位で聞くような話ではなかった。


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