第68章 【番外編】二つの憂鬱
部屋に戻ると、ルルさんがおずおずと近寄り、私の顔をじっと見上げている。
不安そうな、怯えているかのような。
「ジェイドさん、どうしたんですか?」
「いえ、感情すらわかない者と食事をするのはつまらないと思っただけですよ」
そっと手を重ねられる。
小さくて温かい体温がじんわりと私を落ち着かせる。
「心配してくれてたんですね、ありがとうございます」
顎を掬い上げ、柔らかな唇をそっと奪う。
「…っ、ん…」
何か言いたげだった彼女は、戸惑ってから諦めたようにそれを受け入れる。
夕方整えた髪を解すと、髪飾りからさらさらと艶やかな髪が流れていく。
毛先まで手入れの行き届いたそれに満足して、また一つと噛みついた。
「あっ…!も、…」
息苦しそうに身を捩っているが離さない。
恥ずかしさと快楽で徐々に上がる体温を抱き締め、ソファにゆっくりと押し倒した。
「や、ジェイドさん……お、お風呂がまだ……っ!」
「後でゆっくりいただきましょうねぇ」
子供をあやすように語りかけ、するすると音を立てて着ているものを剥がしていく。
花の香りがふわっと舞うと、真っ白な肌。
なんとも美しく、そして欲情させていく。
高ぶりを止めることが出来ないまま、彼女の甘い声をひたすら部屋に響かせた。