• テキストサイズ

互換性パラノイア【TOA】【裏】

第68章 【番外編】二つの憂鬱


養子入りした先の両親に会うのは実に数年ぶりだった。
元々家族のことを疎遠にしていた私は、身内というものをあまり必要としなかった。
研究に没頭してしまったこともあるし、尊敬していた先生のもとにいたせいもあるだろう。
「おや、可愛いお嬢さんをお連れですね」
食事会なんて名ばかりの言い訳。
どうせ見合いを勧められるだけのただの行事。
厳かなシャンデリアだけが優雅に天井を舞っているが、私の心はそれとは正反対に虚しくなる一方だ。
だから彼女を呼んだ。
もう諦めて頂く最後の手段。
可愛いげのない子孫を貰った両親を嘲笑いながら言う。
「はい、私の大切な恋人ですから」
「…っ!!」
ルルさんが赤くなるのは想像できたが、目の前の二人が地面でも割れるかのように驚愕している。
まずは先手を打ったなと、にやりと口元押さえる。
色々思われたこともあるだろうが、静かに食器の音だけを響かせて、我々はさっさと退室した。
いつもと同じ料理人に作らせているのに、食事をする相手が違うだけでなんと味気ないことなのだろう。
そんなことを考えていると、らしくないな、と幼馴染みに嘲笑されるような気がした。
/ 344ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp