第3章 お好み焼き
「うう…食べすぎたかも」
「大丈夫?はい、ガムどーぞ」
「ありがと…」
楽しくて食べすぎちゃったかも。
ミントのガムを口へ放り込むと、少し気分が良くなった。
千石くんが私に歩調を合わせてくれる。ありがたい。
「今日はすっごく楽しかったなぁ〜」
「え?」
「あ、えっと、友達と寄り道とか、ちょっと憧れだったから」
へへへと笑うと千石くんが噴き出した。
「あははっ大袈裟だなぁ〜、でも、もう中学も最後の一年なんだから、あんまり悔いを残さないように過ごさないとね」
「あは、そうだね、もっとクラスに馴染みたいな」
「もっと、俺と一緒にいれば良いじゃん」
「え?」
「ほら、俺こんなだから、みんな警戒してこないし、ちゃんも紛れて馴染めるかもよ?」
「うん、努力するよ」
「っていうか、付き合わない?俺、ちゃんのこと、好き…みたい」
好きの言葉の後に、千石くんの顔がみるみる赤く染まって行った。
「…ええ!?」
赤くなる千石くんを見ていたので、ワンテンポ遅れて驚いてしまった。
真っ赤に染まる夕焼けが空き地に差し込んで、辺りも赤く染めていく。
「あ、いや、なんかごめん、急に…」
誤魔化すように笑うけど、千石くんの顔はまだ赤くて。
「えっと、私、ええと…」
ええと、どうしよう、そんなの、あり?ていうか、好きみたいって、みたいって、どういうこと?
雰囲気で言っちゃった的な?
「あー!もう!ごめん、やり直させて!俺、君のこと好きだ。付き合ってほしい」
赤い顔のまま千石くんが真面目な顔になる。
「………私で、良ければ」
なんとか言うと、手を握られた。
「わっ」
「本当!?本当に!?俺で良いの!?」
「うん、千石くんこそ、なんで私…?」
だって、教室でも、女の子はみーんなタイプ、なんて言ってたのに。
「なんか、気になってたんだよね、ずっと」
手を握られたまま、千石くんを先頭に歩き出す。
耳まで赤いから後ろからも顔が赤いのが解る。
「ずっと?」
「うん、前に大会で同じ会場だったことがあるんだけど、その時に試合してるとこ見て、かっこ良くてさ」
「かっこいい…」
かっこいいところを見て、気になった、と。
なんとなく複雑な気持ち。
私が繰り返したから気にしたのか千石くんが勢い良く振り返った。