第2章 兄貴、信じてたのに
「おお、恋する乙女ではないか!はっ はっ はっ !」
今、なんと?
フェルグスさんが豪快に笑いながら私の肩をぼんぼん叩く。力が強いのだから加減してほしい、膝ががくんがくんと曲がってしまう・・・ではなく。
「何で知ってるの、フェルグスさん・・・えっ、なんで・・・?も、もしかしなくてもまさか」
「ああ、クー・フーリンの奴が楽しげに話しておったからな!どうしたものかとあいつも酒で回らない頭を捻っているようだったな。まさかあのオジm」
「シーーーーーッ!!!」
やはりか。それしかない。
「おのれクーーーーーーーフーーーーーリィィィン!!!!!」
兄貴信じてたのにお酒入った途端にそれか!どうしよう、他には誰が聞いていたのだろうと泣きそうになりながら震えていると、フェルグスさんがオロオロしながら優しく背中をなでてくれる。無骨に見えて女の扱いに慣れているのは流石と言うべきか・・・ちょっと泣きそうになってしまった。
クーの兄貴が本当に心配してくれているのも可愛がってくれているのもよく分かっているが、乙女の秘密を軽々しく酒の席で喋ってしまうなんて。
「見損なったぞ・・・!ねえフェルグスさん、他には誰が聞いてた?口の軽そうな人とか危ない人とかいなかった?!」
「そうだな。あとはジークフリート、ロビン・フッド、ダレイオス・・・それとディルムッド・オディナか。あとの連中はやんややんや騒いでいたからな、聞いていなかったはずだ」
よかった、おもしろがってペラペラ喋りそうな人や、誰とは言わないがそんなことを聞いたら炎を吐いて追いかけてきそうな人はいない。ひとりひとりに他言しないようお願いして回らなくては・・・