第15章 管理人のささやかな楽しみ
ここ、ツキノ寮には各階にウッドデッキが備え付けられている。
そこには洗濯物を干したりする所や6人がけのテーブルと椅子が置いてあり、各自好きな時に出入りが出来るようになっている。
…各階って言っても、私の生息する1階にはモチのロンで無いんですけど…ね…
そして今日、私はグラビの面々が住む2階のウッドデッキにてある人物を待っていた。
「こはねお待たせ!」
ウッドデッキに繋がる扉が開かれ、待っていた人物…葵は紙袋を手に持ち、駆け足で私の所へやってきた。
「お疲れ様、葵」
「うん、お疲れ様。待たせちゃったかな?」
「んーん。全然大丈夫」
「良かった」
そう言って葵は私と向かいの席へ腰掛ける。
実は…私と葵は、月に1回もしくは2ヶ月に1回のペースでウッドデッキにてお茶会を開催している。
元々お互いカフェとかが好きで、あそこのカフェの〇〇がおいしいなどの情報交換をよくしていた。
カフェめぐりとか一緒にしようと思えば出来るんだけど、如何せん葵王子の職業はアイドル。
いくら私が事務所の社員として雇われていると言えど、ファンの人に見られたり万が一にもパパラッチされてしまったりしたら非常にまずい。
そういう訳もあって私と葵は、毎回フード担当とスイーツ担当に分かれて、それぞれのおすすめを持ち寄ってお茶会を開いているのだ。