第10章 掃除の管理人《前編》
物置から脚立を取り出し登り、まずは換気扇の汚れたカバーを外して捨て、更に羽根の部分をはずす。
羽根の部分をシンクに置いてから油汚れ用の泡スプレーを吹きかけて、ちょっとの間放置。
放置している間は換気扇の外枠とかを拭き掃除する。
外枠を拭いていると、傍らに居た隼さんはシンクに置いた換気扇の羽根に興味深々だった。
「こはね」
「はい。なんですか?」
「このスプレーした泡は何か意味があるのかい?」
「あー。その換気扇の羽根、結構汚れてるでしょ?」
「うん、汚れてる」
「ちょっと蛇口捻ってみて下さい」
「?わかったよ」
私は作業する手を止めていないので、下の状況は分からないが、蛇口を捻る音がしたのでおそらく隼さんが捻ったのであろう。
水の流れる音が聞こえてくる。
「すごいね…!水を流しただけなのに汚れがみるみる落ちていくよ!」
「その泡は油汚れを落としてくれる物なんです。スポンジで擦ったらもっとガッツリ落ちますよ!」
「世の中にはこんな便利な物があるんだね」
「ですよね~!これ終わったらそれするんで、置いててくださいね」
「はーい」
さすが京都の名家、霜月家のご子息…
油汚れ用の泡スプレーなんて無縁なのか。
あんなに物珍しいそうに見るとは…
そして、外枠掃除が終わった私は脚立から降りる。
ついでに隼さんはもう既にシンクには居らず、またソファに腰掛けていた。